アインシュタインと仏教

 

 私の学んだ京都にある「龍谷大学」の校友会から会報が送られてきました。

 大変興味深いお話が掲載されていましたので、ご紹介します。

 

 アインシュタインと姥捨て山伝説

 (龍谷大学校友会会報 第82号 2016・平成28年3月25日)

   元浄土真宗本願寺派宗務総長・圓勝寺住職 橘 正信

 

 仏教に学ぶ

★アインシュタインと「姥捨て山伝説」

 昨年は、ドイツ生まれのユダヤ人物理学者のアインシュタインさんが相対性理論を発見して、百年目に当たる年だったそうです。アインシュタインさんは1922年(大正11)に来日して、西本願寺にもこられました。
 アインシュタインさんは、仏教に興味を持っておられました。そのため日本の仏教を知りたいと学僧であった近角常観(ちかずみじょうかん)師にお会いになり話を聞かれました。
 アインシュタインさんが、「仏さまとは、どんな方ですか」とたずねると、近角師はいきなり「姥捨て山」の伝説の話をされたといいます。
 息子が母親を背負って山へ。その時母親は木の枝を折っている。息子は母親が家に帰る目印だろうと思っていたのですが、帰り道で迷い、その折れた枝を頼りに家に帰り着きます。そして、ふと息子はその母心に気づき、あわてて母親を山から連れ戻したーこの話を近角師は切々とされ、アインシュタインさんは深い感動と共に、涙ぐまれたそうです。
 自分を捨てる我が子を捨てきれない母ごころ、それが仏さまのお慈悲です。仏さまに背を向けているにもかかわらず、慈しみのこころを持って、私たちを救わずにおれないとはたらき続けておられる、それが仏さま、阿弥陀さまなのです。

 

 龍RONが聞く「仏教に学ぶ」 

 (龍谷大学校友会会報 第82号 2016・平成28年3月25日)

 

アインシュタインがなぜ仏教を?

 アインシュタインが宗教、中でも仏教に興味を持っていたことは、何冊かの著書に示されています。
 そのいくつかのことばを紹介すると、「宗教なき科学は欠陥であり、科学なき宗教は盲目である」「生きる意味はなにか、その質問に答えるのが宗教である」「仏教は近代科学と両立可能な唯一の宗教である」「現代科学に欠けているものを埋め合わせてくれる宗教があるとすれば、それは仏教である」
 龍谷大学では、仏教系大学で初の理工学部が、1989年(平成元)に誕生しました。当時瀬田キャンバスにおられた多くの理工学部の先生方が仏教に興味を持たれ、創立350周年の記念シンポジウムでも、「科学と宗教」というテーマで、現代科学と仏教とは、全く矛盾しないことが明らかにされたと聞いています。

 

※備考

 アルベルト・アインシュタイン

   1879年~1955年

 ドイツ生まれのユダヤ人の理論物理学者。

 20世紀最大の物理学者、現代物理学の父とも称され、特に彼の特殊相対性理論と

 一般相対性理論が有名だが、光量子説に基づく光電効果の理論的解明によって

 1921年ノーベル物理学賞を受賞した。

 

 近角 常観(ちかずみ じょうかん)

   1870年~1941年

 日本の明治~昭和初期に活動した真宗大谷派西源寺住職。

 東京本郷の求道学舎と求道会館において学生・知識人を感化する。

 『歎異抄』を中心として親鸞の精神を説く。

 『政教時報』『求道』『信界建現』を創刊して、信仰の普及に努める。