会葬の「お礼の言葉」から    2015年10月28日

  会葬の「お礼の言葉」から           2015年10月28日

 千葉県 浄土真宗本願寺派  最誓寺住職 堀田了正 

 先日千葉市のあるご門徒さんの葬儀をいたしました。会葬の「お礼の言葉」には、「明るい母の笑顔を 秋空に思い描いて・・・」と題して、亡くなられた母への「ありがとうございます」の感謝の気持ちと、優しかった母との思い出が、切々と述べられていました。


 遠方にもかかわらず、よくお参りくださったご両親同様、息子さんご夫妻は、先に亡くなられた父との思い出、晩年介護施設にお世話になっていた母の近況や施設職員への感謝の気持ち、いつも慈愛に満ちた言葉で話してくださいました。

 

「明るい母の笑顔を
     秋空に思い描いて・・・」

 

「ありがとうございます」
これはいつも感謝の気持ちを忘れなかった母の
口癖です。心根が優しく、自分はさておき私達
家族や周りのことを気遣ってくれました。
あれは車椅子の生活となった夏真っ盛りのある日の
こと。私が坂道で母の座る車椅子を押していますと
「○、交代しよう 今度は私が押すから」と
言ってくれたのです。その優しさと、自分がまだ
歩けると思っていたことに胸に熱いものが込み上げ
てまいりました。
大正・昭和・平成と激動の時代を乗り越え、家族の
ために尽くしてくれた母に今、心を込めて
この言葉を贈ります。
「本当に、本当にありがとうございました」

 

 日頃世辞に追われ、「諸行無常」の現実に思いをいたすことなく過ごしているわたしが、葬儀の場に臨み、このいのちの不思議さ、尊さ、深遠さに気づかされ、多くのいのちをいただきながら生かされていることに感謝し、いのちを大切にし、いのち終わるとき、「おくりびと」も、「おくられびと」も、「ありがとう」と「命のバトンタッチ」をしたいものです。